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2013年12月04日 1000日目




今日12月4日、あの震災・原発事故発生から1000日目です。

福島県内では未だに約14万人が自宅に戻ることができず
避難生活を送っています。

原発事故への対応については腹立たしいことばかりです。
私の怒りを書き連ねても詮無いことのように思いますので
代りに一つの詩をご紹介します。

福島・原町の 詩人 若松 丈太郎 氏 が、福島で原発事故が起こる
17年も前の1994年に発表された作品です。

すご~く長い詩ですが、静かな気持ちで読んでいただければ幸いです。




     神隠しされた街


4万5千人の人びとが二時間のあいだ消えた
サッカーゲームが終わって競技場から立ち去ったのではない
人びとの暮らしがひとつの都市からそっくり消えたのだ

ラジオで避難警報があって
「三日分の食料を準備してください」
多くの人は三日たてば帰れると思って
ちいさな手提げ袋をもって
なかには仔猫だけをだいた老婆も
入院加療中の病人も
千百台のバスに乗って
4万5千人の人びとが二時間のあいだ消えた
鬼ごっこする子どもたちの歓声が
隣人との垣根ごしのあいさつが
郵便配達夫の自転車のベル音が
ボルシチを煮るにおいが
家々の窓の夜のあかりが
人びとの暮らしが
地図のうえからプリピチャ市が消えた
チェルノブイリ事故発生40時間後のことである

千百台のバスに乗って
プリピチャ市民が二時間のあいだにちりぢりに
近隣三村をあわせて4万9千人が消えた
4万9千人といえば
私の住む原町市の人口にひとしい

さらに
原子力発電所中心半径30㎞ゾーンは危険地帯とされ
十一日目の5月6日から三日のあいだに9万2千人が
あわせて約15万人
人びとは100㎞や150㎞先の農村にちりぢりに消えた

半径30㎞といえば
東京電力福島原子力発電所を中心に据えると
双葉町 大熊町 富岡町
楢葉町 浪江町 広野町
川内村 都路村 葛尾村
小高町 いわき市北部
そして私の住む原町市がふくまれる
こちらもあわせて約15万人

私たちが消えるべき先はどこか
私たちはどこに姿を消せばいいのか
事故6年のちに避難命令が出た村さえもある
事故8年のちの旧プリピチャ市に
私たちは入った
亀裂がはいったペーヴメントの
亀裂をひろげて雑草がたけだけしい
ツバメが飛んでいる
ハトが胸をふくらませている
チョウが草花に羽をやすめている
ハエがおちつきなく動いている
蚊柱が回転している
街路樹の葉が風に身をゆだねている
それなのに
人声のしない都市
人の歩いていない都市
4万5千人の人びとがかくれんぼしている都市
鬼の私は捜しまわる

幼稚園のホールに投げ捨てられた玩具
台所のこんろにかけられたシチュー鍋
オフィスの机上のひろげたままの書類
ついさっきまで人がいた気配はどこにもあるのに
日がもう暮れる
鬼の私はとほうに暮れる
友だちがみんな神隠しにあってしまって
私は広場にひとり立ちつくす

デパートもホテルも
文化会館も学校も
集合住宅も
崩れはじめている
すべてはほろびへと向かう
人びとのいのちと
人びとがつくった都市と
ほろびをきそいあう

ストロンチウム90 半減期 27.7年
セシウム137 半減期 30年
プルトニウム239 半減期 24、400年
セシウムの放射線量が8分の1に減るまでに90年
致死量8倍のセシウムは90年後も生きものを殺しつづける
人は百年後のことに自分の手を下せないということであれば
人がプルトニウムを扱うのは不遜というべきか

捨てられた幼稚園の広場を歩く
雑草に踏み入れる
雑草に付着していた核種が舞いあがったにちがいない
肺は核種のまじった空気をとりこんだにちがいない
神隠しの街は地上にいっそうふえるにちがいない
私たちの神隠しはきょうかもしれない

うしろで子どもの声がした気がする
ふりむいてもだれもいない
なにかが背筋をぞくっと襲う
広場にひとり立ちつくす



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